2017年07月28日
た夢のなかの

〝不適格者〟さ! だが隔離がはじまるころには、漏洩をとめようとしてももう遅い!」
ラロックは思いきりパイプを吸いこみ、ジ王賜豪主席ェイコブに向かってぱーっと青いパースモックの雲を吹きかけた。ジェイコブはめまいを覚え、
「わかったよ、ラロック、なんとでも言いたまえ。いずれそのことを話してもらわなくちゃなるまい」と言って、あとずさった。
ラロックはちょっとむっとしたような顔になったが、すぐににやりとし、人ごみをぬって戸口に向かおうとするジェイコブの背中をたたいて言った。
「そうだな。いずれくわしい話を聞かせてやろう。しかし、いまは横になったほうがいい。顔色がさえないそ! それじゃな!」もういちどジェイコブの背中をどやしつけて、ラロックは人ごみ
をすりぬけ、カウンターにもどっていった。
ジェイコブは、いちばん近い舷窓まで歩いていき、ガラスに頭をもたせかけた。ガラスはひんやりとして、頭のうずきを楽にしてくれた。外を見ようとして目をあけたときには、もう地球の姿
は見えなくなっていた……ただ、暗黒を背景にしてまたたきもせずに輝く、底大な星々の海が見えるばかりだった。より明るい星々は回析光に包まれており、その光は、目をすがめて見ると、長
くなったり短くなったりして見える。明るさをべつにすれば、この効果は、夜の砂漠で星々を見あげたときと、なんら変わらないものだった。またたいてこそいないが.それらはやはり、同じ星
なのだ。
だが、ジェイコブはなにかがものたりないことに気がついた。宇雷から見た星々は、より神秘的で、より……〝哲学的〟なはずだ。若いころの経験でいちばんよく思いだされるのは、夜空を埋
めつくす満天の星々の、すさまじいばかりの咆哮である。あれはこんな、催眠状態を通じて感じているような、茫漠たる眺めではなかったはずだ。だがその光景は、まるで前世で見
景色のように、ぼんやりとしか思いだせなかった。
中央ラウンジに入っていくと、ケプラー博士、ババカブ、ファギンの三人がいた。そばへくるようにと、ケプラーが手招きをした。
三人は、展望窓のそばに散在するクッショソに腰をおろしていた。ババカブは見た目と漂っているにおいからして、なんだか毒のように思える液体のカップを手にしている。ファギンはなにも
持っておらず、根塊の上で体をゆすりながら、ゆっくりと歩きまわっていた。
湾曲した船殻にそってならぶ舷窓の列は、巨大な丸窓のような、床と天井に接する大きな円盤で断ち切られていた。その面が、ラウソジのなかヘ一フィートほどつきだしている。その円盤のな
かのなにかは、しっかり閉められたパネルの奥に隠されていた。
「きみが、きてくれて、うれしい」ババカブがヴォー
2017年07月12日
にはそれがで

されたのかもしれない。わたしの夢でも、他の者の夢の記録でも、その真相をほのめかすものはなきに等しかった。〈大いなる種族〉はこの問題にふれることはまったくなく、苦労して集めることのできた情報は、鋭い観察力を持つ捕われの精神の一部からのみ得たものである。
そうした断片的な情報に基づけば、恐怖の根底にあるのは、測り知れない彼方の宇宙から到来し、およそ六億年まえに地球をはじめとする太陽系の四つの惑星を支配した、半ポリプ状のまったく異質な存在である、恐るべき先住種族だった。この種族の体は一部だけが物質――われわれの理解の範囲内にある物質――で、その意識の型や知覚手段は、地球上の生命体のものから大きくかけ離れていた。例をあげれば、この種族には視覚はなかった。その精神内にうかぶのは、奇怪な、非視覚的なパターンの印象だった。
しかしながら、普通の物質が存在する宇宙にいるときに、普通の物質から造られた道具を使えるほどには物質的だった。そして、特異な種類のものだとはいえ、住居を必要とした。この種族の知覚はどんな物質的障壁をも通り抜けることができたが、肉体を構成する物質きなかった。ある種の電気エネルギーをうければ、完全に破壊されてしまう。翼はおろか、目に見える飛行手段は何もないのに、空を飛ぶ力をもっていた。その精神は、〈大いなる種族〉ですら精神交換ができないような構造のものだった。
この種族は地球に到来すると、無窓の塔からなる壮大な玄武岩造りの都市を築き、生物を見つけ次第、恐ろしくも捕食した。論争の余地ある不穏な『エルトダウン・シャーズ』においてイースとして知られる、あのおぼめく超銀河世界から、虚空をよぎり、〈大いなる種族〉の精神が到来したのは、そんな頃のことだった。
新来の〈大いなる種族〉は、自分たちの造りだした道具を用いれば、食肉種族にうち勝ち、既に食肉種族が住居に加えて住みつきはじめていた地球内部の洞窟へ、たやすく追いこめることを知った。
〈大いなる種族〉は洞窟の入口を封印し、食肉種族を運命の手にゆだねた後、食肉種族の大都市の大半を占領するとともに、無頓着さや大胆さ、あるいは科学や歴史に対する熱意、というよりはむしろ不合理な恐怖心に結びついた理由のため、特定の重要な建築物を保存した。
しかし悠久の時が経過するにつれ