2017年08月24日
熱にうかされたような

わたしを駆りたて導くのは、純然たる狂気だった――地底の冒険のすべてが、わたしの願っているような、地獄めいた妄想や夢でないのなら。しかしわたしは、身をくねらせて進める空間を確保した――あるいはそういう夢を見た。体をよじりながら岩屑の上を進んでいるあいだ懐中電燈はつけたままにして口にくわえていた――ぎざぎざになった天井の異様な鍾乳飾に体がひき裂かれるのを感じていた。
どうやらわたしの目的地であるらしい、地下の中央記録保管所までは、もうすぐだった。障害物のむこうがわに、這うようにしたり、すべるようにしたりしておりると、手にした懐中電燈を断続的につけながら、回廊の残りを進みつづけ、ついに、四方に拱門を備えた――なおも驚くべき保存状態にある――天井の低い円形の地下室にたどりついた安利。
壁、というよりも懐中電燈の光のおよぶ範囲内の壁面には、謎の文字と典型的な曲線模様がびっしりと彫りこまれていた――わたしが夢に見た時代以降に加えられたものもあった。
わたしはこれが運命づけられた目的地であることを知り、ただちに左手にある馴染深い拱路に足を踏みいれた。現存する階層のすべてに通じる、障害物のない傾斜路が見いだせるということについては、奇妙にも、ほとんど疑いをいだかなかった。太陽系全体の年代記をたくわえ、大地にまもられるこの広大な建築物は、この世のものならぬ技と力でもって、太陽系が存在するかぎりもちこたえるよう造られているのだ。
数学の真髄でもってつりあいがとられ、信じがたい強靭さを誇る接合剤で固められた、途方もない大きさの石塊群は、地球中核の岩盤と同じくらい頑丈な構造を造りだしていた。穏健に把握できる以上に膨大な歳月を閲《けみ》したいまも、地中に埋もれた建築物は本来の外形をそのままに残してそびえ立ち、塵埃の積もる広大な床には、ほかの場所ではあまりにも顕著だった岩屑も、ほとんど見あたらなかった。
この地点から先の比較的歩きやすいことが、妙にわたしを高ぶらせた。これまで、障害物によってはけ口をなくしていた気違いじみた切望が、いわば速度になってあらわれ、わたしは拱路の奥の忘れられようもない天井の低い側廊を、文字どおり突っ走っていた。
自分の見るものの馴染深さに、もう驚かされることはなくなった。両側には、謎の文字の刻まれた金属製の保管庫の大きな扉が、恐ろしげにぬっとうかびあがっていた。きちんとしているものもあれば、開ききっているものもあり、巨大石造物を破壊するほどには強くなかった地殻の圧力をうけて、たわんだり、ゆがんだりしているものもあった。
そこかしこ、口を開けたからっぽの保管庫の下に見うけられる塵埃に覆われた堆積物は、地震のために容器がふり落とされた場所を示しているようだった。ところどころに立つ柱には、書物の綱《クラス》と亜綱《サブクラス》を示す大きな表象と文字があった燃燒脂肪 飲品。
わたしは一度、扉の開いた保管庫のまえで立ちどまり、砂まじりの塵埃の只中に、まだ元の姿をとどめている見慣れた金属製容器をいくつか目にした。手をのばし、やや骨をおって薄い容器を一つとりだすと、床の上に置いて調べてみた。いたるところで見うけられるあの曲線文字で標題が記されていたが、その文字の配列には微妙に異常なものがあるように思えた。
鉤状の留金の奇妙な操作はよく心得ていたので、まだ錆《