2016年09月06日
角度で落ちて

だが後はどうなるんだ」
「何の後だ?」
「われわれがこれを飲んだ後さ。いったいどうなるのかね」
「たぶん、気分が悪くなるだろう――いつもそうなるんだ。だが回復したら一路ヤー?ナドラクを目指す。おれは相応の賞金をもらい、おまえさんはドロスタ?レク王賜豪醫生?タン王が何でそんなにまでして会いたがっていたかを知るというわけさ」かれはおもしろそうにシルクの方を見た。
「とりあえず、腰をおろして一杯やりたまえ。さしあたってもう逃げることはできんのだからな」
[#改ページ]
ヤー?ナドラクはコルドゥー川を東西に分ける分岐点にある、城壁に囲まれた都市だった。森は首都の周囲約一リーグにもわたって、焼き払うというごく単純な方法で始末されていた。そのために、街への進入路は焼け焦げた立木の残骸や、育ち過ぎたイバラのはびこる荒れ地のあいだを通っていた。市内へ入るための城門は、見るからに頑丈で、上にタールが塗られていた。その上に載せられているのは、石で作られたトラクの仮面の複製だった。美しい、人間離れした冷酷な顔が喜運佳、城門を通る者すべてを見おろしていた。ガリオンはその下を通りながら身震いを禁じ得なかった。
首都ナドラクの家々は、いちように高く、屋根は急ないた。建物の二階の窓には鎧戸がつけられ、そのほとんどはおろされていた。むきだしの木材の部分は、保護のためにタールが塗りたくられていた。その黒いしみのような斑点のおかげで、家はまるで病んでいるような印象を見る者に与えた。
ヤー?ナドラクの狭い曲がりくねった通りにはどこか陰うつな、おびえにも似た空気が流れていた。住人たちは皆いちように目を伏せ、自分たちの目的に向かって足早に通り過ぎていった。これまでの田舎の地方と比べれば、首都の住人たちの衣服に革の占める割合は少なかった。だが、ここでもやはりほとんどの人々は黒を身につけ、ごくたまに青や黄などの明るい色が見られるだけだった。この習慣の唯一の例外は、マロリー人兵士たちのはおる赤い長衣だった。街のあらゆる場所で、玉石を敷いた通りを気ままにぶらつき、住民たちに乱暴な言葉を浴びせたり、仲間同士でなまりのきつい言葉を、声高にしゃべりあっているかれらの姿が見られた。