2017年04月26日

無意味に口

無意味に口
以前とはまったく異なるものだった。ガードナー家の者たちは夜に監視をするようになり適当にあちらこちらに目を向けるのだが――何を見つけようとして身體脂肪いるのか、自分たちにもわからなかっ
た。タデウスが木々についていったことが正しいと、誰もがそう思ったのは、そんなときのことだった。月のうかぶ空を背景に、楓《かえで》のふくれあがった枝を窓から眺めていたネイハムの
妻が、二番目に目撃することになった。確かに枝が揺れているというのに、風は吹いていなかったのだ。樹液のせいにちがいなかった。もう何もかもが奇怪に成長しているのだから。しかし次の
発見をしたのはガードナー家の者ではなかった。ネイハムたちは馴染深さのために感覚が鈍ってしまっていたので、地元の新しい伝説を知らず、ある夜ネイハムの農場を馬車で通りかかった、ボ
ストンの臆病な風車販売員が垣間見たものに、客製化
気づくこともなかったのだった。販売員がアーカムで話したことは、『ガゼット』紙に短い記事として掲載され、ネイハムもふくめ、農夫たちが事
態をはじめて知ったのは、その記事によってだった。記事によれば、闇夜で馬車の灯も弱かったが、ネイハムのものに相違ない谷の農場のあたりでは、闇もそれほどたれこめていなかった。ぼん
やりとはしているものの、それでいてはっきりした輝きが、すべての植物、草にも葉にも花にも備わっているようで、一度などは、納屋《なや》近くの庭で、燐光がひっそりと宙に舞ったという

 のジナスがすべて刈りとった。妙にふくれあがった昆虫たちはそのころに死に、巣を離れて林に行っていた蜂さえもが死んでしまった。
 九月になると、植物がすべてぼろぼろに崩れて灰色の粉になってしまい、毒素が土壌からなくならないうちに木々も枯れてしまうのではないかと、ネイハムは恐れた。そのころには妻が恐ろし
い絶叫をあげるようになっていて、ネイハムと子供たちは絶えず精神的に緊張した状態に置かれた。いまではガードナー家の者が人を避けるようになり、学校がはじまっても子供たちは行かなか
った。しかし井戸の水がもう飲めないものになっているのを最初に知ったのは、ごくまれに訪れるアミだった。悪臭があるわけでも塩気があるわけでもないのだが、井戸の水はどうにもひどい味
がして、アミは友人に、土壌が回復するまで、高台に新しい井戸をつくったほうがいいと助言した。しかしネイハムはその言葉を無視した。もうそのころには、不思議なことや不快なことがひき
もきらずにおこっていることで、すっかり無神経になってしまっていたのだった。ネイハムと子供たちはあいかわらず汚染された水をつかい、手を抜いた粗末な食事をとりながら、もの憂げに漫
然と水を飲みつづけ、あてのない日々を単調な雑用にかまけてすごしていた。何かあきらめきったようなところがあった。馴染深い確実な運命に向かって、別世界で名状しがたい番人が立ちなら
ぶなかを、なかば歩いているかのようだった。
 タデウスが九月に井戸へ行ったあと発狂した。手桶をもっていったのだが、帰りは手ぶらで、悲鳴をあげながら両手をふりまわし、ときおり「井戸の底で動いてる光」について、走
るというか囁いた。家族のうちふたりまでが狂ったのだが、ネイハムは凛々《りり》しかった。一週間タデウスを好きなように走りまわらせていたが、やがてつまずいたり怪我をしたりするよう
になったので、妻を閉じこめている部屋と向かいあう屋根裏部屋に、タデウスを閉じこめてしまった。閉ざされたドアの奥から、ふたりがたがいにあげる悲鳴はすさまじいもので、とりわけ幼い
マーウィンにはこたえたらしく、ふたりがこの世のものではない恐ろしい言葉で話しあっているのだと思ったほどだった。マーウィンは気味悪い想像にふけるようになり、一番の遊び相手だった
兄が閉じこめられてからは、ますます情緒《じょうちょ》不安定になっていった。

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Posted by のために曲を作ってください at 12:15│Comments(0)育兒
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